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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第13章 陽溜まりの猫

 もっと強く、もっと深く。
 絶頂はすぐに訪れた。
 秀龍を強く締め上げる春泉の繊細な内奥が小刻みに震えている。
「良かった。春泉、今宵のそなたはいつもと全く違う、まるで別人のよう―」
「止めて」
 鋭いひと言で遮り、春泉は顔を背けた。烈しい屈辱と恥ずかしさでこの場から消えてしまえるものなら、消えてしまいたい。
 そんなことをあからさまに言われても、少しも嬉しくない。むしろ、我が身が売春婦にでもなったような気がした。
 秀龍はまだ春泉の中に入ったままだ。
 春泉の頑ななまでの拒絶に、秀龍が切れ長の眼(まなこ)を細めた。
 何を思ったか、再び春泉の奥を鋭く突き始めた秀龍に、春泉が抗議の声を上げる。
「旦那さま、もう止め―」
 だが、秀龍は何ものかに挑むように、先刻よりももっと力強く春泉を突いてくる。
「ぁあ、ああっ」
 確かに、今夜の自分はおかしかった。常にも増して、膚が、身体中の感覚すべてが研ぎ澄まされ、敏感になっているようだ。秀龍の熱い唇や濡れた吐息が膚を掠める度に、狂おしくて叫び出したいほどの快感が身体中を漣のように駆け抜けてゆく。
「う、あ―」
 自分の声とは信じられないような艶めかしい喘ぎ声が洩れそうになり、唇をきつく噛みしめる。あまりに強く噛んだため、口中に鉄錆びた血の味がひろがった。
「春泉、綺麗だ」
 乱れる春泉を秀龍が真上から感情の読み取れない瞳で見下ろしている。
 秀龍の動きが次第に速くなる。
 今の彼はまるで極限状態にまで追いつめられた獣そのものだ。
 やがて、春泉もほぼ同時にぎりぎりまで追い立てられ、急き立てられる。
 次の瞬間、秀龍が彼自身の切っ先で春泉の最も敏感な箇所を抉った。
 駄目、そこは駄目。
 春泉は夢中で首を振る。
 これ以上、こんなことを続けていたら、身体だけでなく、心まで壊れてしまう。あまりに強すぎる快感を与えられ続け、春泉は喘ぎもがき、苦悶に涙を浮かべた。
 なおいっそう強い快感の波が春泉を襲い、春泉は鋭い叫び声を上げる。

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