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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第13章 陽溜まりの猫

 思わず手のひらで口を塞ごうとした春泉の手を秀龍が捉え、自らの唇でその紅く官能的な唇を覆った。 
「うぅっ―」
 くぐもった喘ぎ声がつやめかしく二人きりの閨の底に響く。
 春泉の瞳からひと雫の涙が溢れ、白い頬を流れ落ちる。秀龍はその涙を唇で素早く吸い取った。
 春泉の頬に触れた秀龍の唇は異様なまでに熱を帯びている。頬にほんの少し唇が掠めただけで、春泉の華奢な裸身がピクリと震え、身体中に妖しい官能の波がひろがった。
 愛撫と唾液に濡れた薄紅色の乳首の先端がつんと尖って上向いている。秀龍は熱っぽいまなざしでその様を見つめていたかと思うと、満足げに微笑んだ。すかさずチュッと音を立てて可愛らしい乳房の先を吸い上げる。
「ああっ?」
 いきなりの攻撃に春泉は堪りかねて声を上げた。
 秀龍の声がいつになく艶を帯びている。
「春泉、好きだ」
 乳房を片方ずつ丹念に揉まれては吸われ、春泉は息も絶え絶えに喘ぎ、乱れた。 
「秀龍さま、私―、もう」
 これ以上、快楽地獄に居続けたら、きっと自分は壊れてしまう。おかしくなってしまう。
 そう訴えたいのに、秀龍はうっすらと微笑み、春泉を満ち足りた表情で眺めているだけだ。烈しすぎる情事のために潤んだ瞳で見上げた春泉の髪を、秀龍が愛おしげに撫でる。
 その後、あたかも春の夜の嵐に舞い散る花びらのように、春泉は幾度も深く強く秀龍に刺し貫かれた。
何度、交わっただろうか。春泉はしまいには、それすら判らなくなっていった。
 
 その翌朝、春泉を起こすために部屋を覗いたオクタンは仰天した。
 春泉の布団がもぬけの殻だったのである。
 豪奢な夜具は既に冷え切っており、春泉が既に何刻も前に出ていったことを物語っていた。
 オクタンはすぐに秀龍に知らせた。いつもは秀龍が春泉の部屋を訪ね、若夫婦は褥を共にするのだが、昨夜は違った。
 秀龍は夕餉を春泉と取った後、自室に戻り、二人は別々に寝んだ。こんなことは珍しく、オクタンは二人が喧嘩でもしたのかと気を揉んだ。

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