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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第3章 父の過ち

 父はこのようなタイプの娘が好みなのだろうか、などと、今更のことをぼんやりと考えた。
 春泉は虚ろな視線をゆっくりと動かした。
 裸で絡み合う二人の傍らに、父が剥ぎ取ったであろう娘の粗末なチマチョゴリや下着が散らばっていた。父の方は衣服は脱がず、ズボンと下履きだけを降ろしているようだ。
「春泉―」
 娘に最悪の現場を目撃され、千福も流石に表情を強ばらせている。
 春泉が物置の扉を開け、千福が声を発するまで、またたき数回ほどのわずかな時間であったはずだが、春泉には永遠に続く拷問のように感じられた長い時間だった。
 もう一度、乱雑に脱ぎ捨てられた女中の衣服や下着を見る。ヤニ下がった顔でスンジョンから服を脱がせている父の様子が難なく想像できる。
 若い女中は抵抗したのだろうか? スンジョンも柳家に上がって一年も経つのだから、母の嫉妬深さは知っているはずだ。当人も先刻、父に訴えていたように、このことが母の知るところとなれば、この娘は無事では済まないだろう。
 が、冷静になって考えれば、都随一と謳われる豪商柳千福の愛人の立場は、その恐怖を上回るだけの魅力あるものともいえるかもしれない。母に見つかる前に、千福がスンジョンを屋敷から他の場所に移してしまえば、母ももう迂闊に手出しはできない。
 計算高い女であれば、千福が手を伸ばしてきた時、この女好きの主人に身を任せることが栄耀栄華への近道だと考えるかもしれないのだ。
 春泉はスンジョンという娘について、よくは知らない。が、いつだったか、滅多に他人の悪口を言わぬ玉彈が
―最近の若い者は私たちには考えられないことをやらかすものですねえ。
 と、ぼやいていた。どうも、新入りの女中をめぐって、若い下男同士が烈しい取っ組み合いの喧嘩になったらしい。知らせを聞いた年配の執事が駆けつけ、二人を他の下男たちが羽交い締めにして止めたから良かったようなものの、あのままでは、どちらかがどちらかを殺すことになったかも―と、玉彈は心底、怖ろしそうに話していた。
 だが、後日、執事が死闘を繰り広げた二人を別々に呼んで訊ねると、悪いのはどうやら男たちではなく、女の方だったらしい。

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