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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第4章 母の恋

 柳家の奥まった一角、夫人の寝室はひっそりと、あたかも千尋の海の底を思わせるようであった。豪奢な絹の夜具には上掛けに鮮やかな緋牡丹の刺繍が施されている。
 少年は室内に入るまでは、殊勝にチェギョンの後をついて歩いていたが、室内で二人だけになるや、チェギョンをいきなり抱き上げた。
 そのまま大股で部屋を横切り、上掛けを捲ったかと思うと、彼女をやや乱暴な仕種で褥に転がす。
 いきなりのことに愕いたチェギョンが身を起こそうとするのに素早く覆い被さって、唇を奪った。烈しい口づけに唇を覆われながら、チェギョンはこの少年があまりにも女の扱いに手慣れていることに衝撃と怖れを感じていた。
 まだ十七ほどの少年がここまで女を抱くことに馴れ切っているとは。
 そう思いながらも、その強引さに逆らえない。もし、彼がそういった女性の心理までをも計算し尽くした上でチェギョンを愛撫しているのなら、最早、末怖ろしいとしか言いようがない。
 少年の指先がチェギョンの唇をさっと掠めた。
「紅を差しているんだね。でも、紅なんかない方が良いよ。元が十分すぎるほど綺麗な色をしているんだから」
 俺が取ってあげる。
 少年はあの蠱惑的な笑みを浮かべると、チェギョンの唇を再び自分の唇で覆い、舌で丹念に唇を舐めた。チェギョンはただ、彼になされるがままになっているしかない。
 少年の手が動き、チェギョンの後頭部で結った髷(まげ)を崩してゆく。髷に挿した珊瑚の簪をスと抜き取ると、三つ編みを解く。艶やかな黒髪がざっと滝のように流れ、背中に落ちた。
 更に彼はチェギョンの手を掴み、白くほっそりとした指を自分の口許へ持っていく。まるで飴を貰った幼子のように無心に彼女の指を咥え、丁寧に舐め、吸った。チェギョンの指を一本、一本、同様に愛撫してゆくのだ。
 彼が生まれたての赤児のように自分の指を吸う度に、チェギョンは指先からじんとした痺れが身体中に向かって拡散されてゆくのを感じた。
 時間をかけて、ゆっくりと指を愛撫した後は、今度は耳許に顔を近づける。
 一体、何をされるのかと彼女が身を退こうとすると、少年は神々しいほどの微笑みを浮かべた。

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