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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第4章 母の恋

「怯えないで。美しい人」
 熱い吐息が近づき、少年の舌がチェギョンの耳朶をペロリと舐め上げた。指先のときと同じように、彼はゆっくりと彼女の耳をねぶり、愛撫を加えてゆく。女の身体を探検してゆくことに、刻や手間暇をかけるのを惜しまないらしい。
 性急だったのは褥に押し倒して唇を奪うまでで、その後はひたすら、ゆっくりと焦らすような行為の連続であった。
 ―全く怖ろしいほど慣れた手つきだった。
 そうやって、刻をかけてゆけば、女の方はいつしか次を、彼の指先がどこにゆくのかと待ち焦がれるようになる。焦らして、女の身体に火を付けて。
 一体、どれほどの数の女を相手にして、これだけの技を身につけたのかと疑問にすら思った。
 しかし、そんなことを客観的に考えていられたのも最初のうちだけであった。
 少年はいつしかチェギョンのチョゴリの前紐を解き、その下に巻いた白い布すらもするすると解いていった。相変わらず、手慣れた仕種である。
 彼女が我に返ったときには、既にチマだけを身につけたあられもない姿で、上半身は何も着てはいなかった。
「何て、あなたはきれいなんだろう。美しいのは顔だけではなくて、身体も同じなんだね」
 到底、十六になる娘を持つとは思えない。
 少年が呟いた刹那、チェギョンは弾かれたように上半身を起こしていた。
 美しい魔物に持ってゆかれそうだった心を危ういところで取り戻し、辛うじて僅かばかりの理性を保っていた。
「あなたは一体、何者なの? 私が誰だかを知っていて、あなたはここに来て私を誘惑したのね」
 チェギョンが鋭い口調で言うと、少年は優美に微笑んだ。
「そんなことは、どうだって良いじゃないか。情事を愉しんでいる最中に、無粋なことを言う人だねえ」
「自分の歳を考えなさい。あなた、歳は幾つなの? もし、あなたがこんなことをしていると知ったら、あなたのお母さまはとても哀しまれると思うわ」
「フッ」
 少年は小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「なに? 俺を閨まで引きずり込んでおいて、今更、母親ぶってお説教する気なの?」

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