【可愛い】の魔法
第1章 三年目・miyu
ピンポーン
レトロなインターフォンが来客の報せを響かせた。
『誰だろ』そう思う前に、ピンポンピンポンと乱暴に連打する音で分かった。
・・・秋だ・・・
喧嘩の後は、大体秋が謝りにくる。
こうやって慌てた様子でインターフォンを鳴らすのが、いつものお決まり。
あたしのお決まりは、ドアチェーンをかけたまま、小さく開いたドアから声だけを覗かせる。
「まだ・・・怒ってるよ・・・」
「わかってるよ・・・」
一応無事を確認したからか、秋の声に安堵の色が見えた。
仮にもデート中に自分を撒いた彼女を心配して、慌てて駆けつけてくれる秋の優しさに、止まりかけてた涙が押し寄せてきて、ズズッと鼻を啜る音が漏れた。
「泣いてたか」
質問じゃない、秋の言葉。
『やっぱりな』って続いてきそうな声は、優しさが感じられる。