【可愛い】の魔法
第1章 三年目・miyu
「いつから泣いてた?」
「ドア、閉めてから」
「そ、ならいいか」
「なにそれ?意味わかんない!」
「その意味、説明してやるから、開けなよ」
誘われるようにチェーンを外して、さっきまでの怒りが嘘みたいに、すんなり部屋に上げるあたし。
あたし、いつもこんな感じだなぁ・・・
自分の簡単さに呆れながらも、秋の言葉巧みな誘惑は、見習いたいとさえ思ってる。
玄関には入ったものの、下駄箱に背を預けたまま、ムッとした表情であたしを見る秋は、ちょっと怖い。
「なに、よ?」
負けじと睨み返す。
「もぉ、」
預けてた背を起こして、あたしの両脇の壁に手をついて言った。
「まじで、無事で良かった~」
「へ?」
あたしの間抜けな反応なんか気にも止めず、ふわっと抱きしめた。