俺を好きだと言ってくれ
第3章 *初恋..
ぺちっぺちっと軽く頬を叩く美優を龍平は不思議そうに見つめた。
「モッチー、手グーにして」
『美優、』
「一発だけでいいの。
思いっきり『こっち来い』
龍平は美優に握られてた手で美優の手を握り返し、廊下へと連れ出した。
「モッチー…!『何があったんだよ。言えよ。』
モッチーはあっちゃんと同じくらい頼りになって大好きな友達―…
何でも話せるし、一緒にバカなことだってできる。
「…………」
『美優、何でも話す約束だろ?』
でもただ一つ、モッチーがあっちゃんと違うのは、神崎くんの友達であること―…
「……大丈夫………何でもない……」
今までの私なら神崎くんのことで涙を流すことなんてなかった。
関わりもなくて、ただただ見てるだけの一方的な恋だったから―…
『…美優……『龍平?』
私の胸が恋で苦しいのは、神崎くんと話すようになって、突然距離が縮まってから―…
『…空…………』
誰もいない教室を伺いながら覗くのは、私の涙の原因である神崎くん本人―……
『…奥田さん………?』
どうしたの?と言わんばかりのきょとん顔で、涙でぐしゃぐしゃの美優の顔を見つめる。
『美優、もう話して。
話せばすっきりするだろ?』
話せない。
当の本人がいたら話せるわけがない。
『俺も…力になるよ……?
何があったかわかんないけど……』
癖になってるのか、目にかかってない切りたての前髪を分けようといじる神崎くん。
「………いいっ、別に………」
ここまで意地を張ると余計に話せなくて、神崎くんがいたら尚更言えない。
みんな無神経すぎる。
高ぶる感情が怒りへと変わった瞬間―…
『…美優「神崎くんがいたら話せないの…!」
………言ってしまった。