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たまゆらの棘

第2章 燃ゆる日々

今朝、倫は友人宅で目覚めた。「だいじょぶか?」何人かがごろ寝した中で倫は目を覚ました。「倫、何かあったのか?」「どうして?」倫はぼうっとした頭と、軋む体でゆっくりと起き上がった。「いてて…いつ、寝たんだろ、記憶ない。」倫は言った。「君がこんなパーティー来ることなかったじゃないか。」友人は言った。「忘れたいことがあったから…でも…忘れられないや。」倫はつぶやいた。(いや、これでいい。悪魔は悪魔らしく…これが正しい)倫がその家を出たのは昼の12時を過ぎていた。原宿だったので倫は代々木公園に寄った。初夏の日差しは倫の目に痛かった。ベンチに座り、そして寝転んだ。ポケットを探り、昨日もらった大麻がまだ少しあることを倫は知った。トイレに行き、一本の煙草の中身を器用な手で少しずつていねいに捨てると、ただの紙筒のジョイントが出来た。そこに大麻を詰めて倫はトイレの中で火をつけて吸った。吸い終わるとまた元のベンチに戻り、寝転んだ。初夏の新葉が木々に揺れて、そこに小さな妖精が見えた。ウスバカゲロウのような羽を持った妖精達がそよ風に吹かれ、黄緑色の新葉の中でおしゃべりをしていた。優しいその光景とそよ風は倫を心地よくさせた。「妖精さん、俺は悪魔だよ。…きをつけて…少しだけ夢を見させて…」綺麗だ、綺麗だ…ゆらゆらと幻覚に身を任せていると、「おい」、と男の声がした。

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