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たまゆらの棘

第2章 燃ゆる日々

(悪魔は悪魔らしく地獄に堕ちればいい…)正直、何故、素直に幸せをかみしめられぬのか、自分でも解らなかった。それは義父に虐げられていた頃からの刷り込みのような物だったのかもしれない。「自分は…幸せになる運命ではない」という。



「また、やったのか?」藤原は倫の体を見て言った。「こういう下手な奴にはやらせるな!」赤く腫れた鎖骨に、縄の跡がくっきり付いた倫の腰を見て藤原は怒った。「趣味だ!束縛しないって約束だろ。」倫は言った。藤原は目をつむり、頭をゆっくりふって言った。
「たまらない…傷ついたおまえは見てられない、」そう言って藤原は黙った。倫も黙った。

「顔には傷つけるなと言った。」しばらくして倫は言った。藤原は即答で「そういう問題じゃない!俺がどれだけおまえの全てを愛しいかおまえに解るか?」藤原は初めて倫に向かって怒鳴った。倫は驚いたが、静かに言った。
「…束縛しない約束だ。」くっ…藤原はそれを聞いて拳を強く握った。「倫…何が欲しい?」
「欲しいもの…死かな…」倫はベッドに横たわり、両手をぶらぶらさせて全てを見下すように言った。

「…オムレツじゃだめだったか。」藤原は小さく言った。
「え?」
「…いや、なんでもない。…おまえは死が欲しいんだな。じゃあ…」藤原はコニャックをグラスに入れて自分が一口飲むと、倫に無理やり飲ませた。
「倫!」藤原は荒々しく倫を襲った。
「殺せ!殺せ!俺を殺してくれ藤原!」倫は泣き叫んだ。
今までにない激しさで倫は藤原に抱かれた。(…苦しい…苦しい…もっと苦しくしてくれ…)倫は軋む体で熱望した。明け方まで倫は激しく抱かれ体中が痛みに震えた。静かにベッドに横たわる今、藤原は言った。「…倫…これがお前の望みか?」倫は答えなかった。「…体…痛い…」倫は小さな声で言った。「痛いだろう。」藤原も小さな声で言った。「…痛いけど…嬉しい…」そう言って倫は、今にも明けそうな空を、その綺麗な瞳で見つめた。

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