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「倫…」あれから十二日目に倫は突然、藤原のマンションを訪れた。「倫…何度も電話したろ。マンションにも行った。居留守使ったな。早く入れ。」藤原は倫を中に入れるとすぐに抱きしめてきた。
「藤原…話しがある。」倫は藤原を手で払い、動じず冷ややかに言った。

しばらく沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは倫だ。
「別れよう。」
藤原はそれを聞いてすぐには口をきけなかった。「…倫…なんで…」やっとの思いで藤原は重たい口を開いた。そして「ママに何か聞いたな。なんだ？言ってみろ。」 倫は黙った。「言え！倫！」藤原が倫の胸ぐらを掴んだ事で倫は押しやられ、白い壁にぶつかった。「言え！倫！」藤原の形相は変わっていた。

「俺が…藤原の死んだ奥さんにそっくりだって…」藤原はそれを聞いて言った。
「なんだ、そんな事か。つまらん」藤原は倫の胸から手を離した。「アンタには解らない！」倫は大きな声で言い、壁づたいに泣き崩れた。藤原は驚いて倫のそばに駆け寄った。
「俺には、解らない？…なにが…？」倫はしばらく黙ったまま泣きじゃくった。
「…俺はアンタの奥さんの身代わり…別れたい、藤原！」倫は泣いた。藤原はそれを聞いて「倫！馬鹿野郎！お前はお前だ！俺が今、愛しているのはここにいるお前だけだ！」藤原は泣きじゃくる倫の肩を揺さぶって抗議した。