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たまゆらの棘

第1章 幼き日々

倫を心から大切に思う男子生徒が一人いた。名前を須藤 海斗と言った。須藤は体育の着替えの時の虐待を受けた倫の体は有名だったが、それについても本当に心配していた。

ある日、誰もいない屋上で、二人初めてキスをした。須藤はファーストキスが倫で嬉しいと、まるで女子のようなことを言った。「でも俺は初めてじゃないぜ。」倫は毒づいた。
「教えてやろうか、俺の傷の秘密。」倫は須藤だけに自分の全てを話した。須藤はそれを聞いて泣いた。「泣くんじゃねえ。俺が惨めだ。」倫は言った。「俺に出来ることはないか?」「…ないよ。」倫はそう言って煙草の煙を冷たく吐いた。「じゃあ、俺に触られるの嫌だったろうな。」須藤は言った。「…いや。もっと触ってよ。嫌なこと全部忘れさせて…」倫はうつむき、憂い顔で小さく言った。「でも…同性愛は禁止だぜ。聖書の中では。」須藤は恐る恐る言った。「なら、いい。」倫は白く曇った空に、また煙草の煙を吐きながら言った。しばらく沈黙が続いた。二人は目を合わさずにいた。須藤は…すぐ横にいる倫を…そっと静かに見やると、じいっと見つめ、目に涙をためて言った。「倫。好きだ。…たまらないんだ。好きで。…ごめんなさい、神様…」倫は須藤に抱き締められた。(俺は悪魔だ。またひとり…犠牲者。)

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