テキストサイズ

GAME

第8章 他人の痛み、自分の痛み

「うは!やったじゃねぇか!」


突如先程まで怒鳴っていた新井が歓喜の声をあげる。


新井の代打ちはJ、Kの20を引いていた。


「おめぇすげえな!」


新井はプレイヤーを高ぶった声で誉める。

が、しかし。


プレイヤーの男は青い顔で俯いて目を瞑ったままだった。



そして決意をしたように目をかっと見開く。




恐怖を滲ませながら怒りに満ちた、明らかな殺意を宿らせた目つきで、ディーラーに告げた。



「ダブルダウン」



男は声を震わせ残りの150のチップに手をかける。

「えっ……ばっ…バカか!」

ディーラーの手が動く。

1が出なければバースト。

「馬鹿ッ! 馬鹿野郎っっ!! やめろ! やめろ! やめてくれっっっ!」

新井が暴れ、束縛椅子をガタガタと大きく揺らす。

しかしディーラーは全く取り合わずカードを捲り、男に配る。


ディーラーが出したカードは8。



28でバースト。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ