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GAME

第13章 兎

「俺があのブラックジャックでするべき役割だったのは、陽動だよ」

「陽動……?」

「そう。あのゲームは俺みたいな人間がいないと盛り上がらないんだよ。人間はみんな偽善ぶりたがる。今日あったばかりの赤の他人でもやけに気を使いたがる。いや、気を使った振りをしたがるもんだ」

ニヤリと笑いながら語る重森にほのかは生理的嫌悪感が湧く。

「他人の身体のパーツや命を賭けながらギャンブルをしろって言われてもさ、何に気を使ってだか知らないけど人は派手に賭けられないものなんだよ」

それはそうだ。
私も賭けられず、しまいには自らのペナルティ覚悟でゲームを中断した。

後悔がない、と言えば嘘だが、間違ったとは思っていない。

「そんなこと当たり前だ、そう思ってるんだろ?」

「そうよ」

心のなかを当てられたが、動揺など見せずにほのかは答えた。

動揺すれば重森の期待通りだと感じたからだ。

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