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逢いたくて、素直になれなくて

第2章  衝撃的な出逢い

ボンネットをベコっとへこませ煙草を加えポケットに手を突っ込み、こちらを向いている男がいた――-


「…お前等、こっから今すぐ失せろ」


どすのきいた低い声はどこか甘く色気を含んでいる。


「はぁ?!んだとてめぇ、ぶっころ『っおい!止めろ!!』」


私の目の前に居た男と車から急いで降りた男が、車の上の男に殴り掛かろうとした時、私を押さえつけている男が言葉を遮り止めた。


「おめぇら、そいつの事しらねぇのか?!…流ヶ崎來だぞ…?」


男の言葉に殴りかかろうとしていた男達の顔が、みるみるうちに青ざめていき、2人とも尋常じゃない汗が出ている。


流ヶ崎…來?


「な、んで珠蓮〈シュレン〉の頭〈トップ〉が此処にっ?!」

男の1人が怯えたような声で言うと、


スタッ―ー


へこんだボンネットから最低限の足音で路面に着地した流ヶ崎來は変わらぬ姿勢で、加えていた煙草を親指と人差し指で挟み、ポイッと男達の方へ飛ばした。


「…あ?お前等瀑螺〈バクラ〉の下っ端だろ?誰が此処に近付いていいと言った…とっとと失せろ」


彼が不良達の方へ1・2歩踏み出した時、


「ッチ、おい行くぞ!」


彼を避けるように不良達3人はボンネットがへこんだ車に乗り込み、そそくさと逃げて行った―ー


ブォォーン――ー


逃げていった車の後ろ姿を眺めていた私は、男達が居なくなった安堵からか突如全身の力が抜けて、その場にへなへなとへたり込んだ。


…唖然。流ヶ崎來と言う男が現れてからたった3分位の出来事に、理解力が足りない頭で必死に現状を分かろうとしたけれど、襲われかけた恐怖心が真っ先に私を埋め尽くした…






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