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第10章 裏と表(律視点)

「女性に手を上げるのは、どうかと思いますよ」

舌打ちする俺は、この男が只者じゃないと気付いた。咄嗟の態様といい、動きが明らかに手馴れていたからだ。

此方としては、止めてくれて有り難いが些か腑に落ちない。モヤモヤする胸の苛立ち、自分自身の不甲斐なさに呆れてしまう。

もう少しで、睦月を殴ってしまっていたかもしれないと思うと苦しくて彼女を見れなかった。

逸らしていた視線

『長谷川君』と呼ぶあの女が近付いていた。

避けてしまった睦月とは、あの後話すら出来ずに陽は沈み夜になった。

そんな俺を外に呼び出したのは“金剛智則”だった。互いに反りが合わずに険悪な空気が辺りを包むなか、金剛はメガネを中指で上げた。

「君はやはり危険だと、再認識したよ。そもそも、君は自分の立場を分かっていますか?」

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