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隣人

第3章 五月雨  6月

「梅雨だって言うのに、今年は雨が少なくて良かったな」
結婚式当日。天気にも恵まれ、二次会会場“K”は賑わって来ていた。

DJブースの雅人は、機材の調整を兼ねて、軽くレコードを回す。
もっぱら、レコード派の雅人。
そんなアナログな所もカッコイイと思っている美咲、その他。

雅人の周りには取り巻きが集まる。

「Congratulations!」
司会の男の子が合図の一言を発すると、雅人がCMで有名なパパパパーンを流す。
マリと新郎さんが登場。
フロアはさらに盛り上がった。

簡単なフードを並べ、マスターと美咲、その他2名の店員が、ドリンク注文に追われる。

「テキーラショット2つちょうだい!」
1回目を回し終わると、美咲の前に雅人がやって来た。
雅人の担当は、始めとラスト。
ショットグラスを受け取ると、隣の女レイに渡す。
「カンパーイ!」
二人は一気に飲み干すと、フロアに戻って行った。

「ねえ、いつまであのガキと付き合ってるつもり?」

レイがふて腐れながら雅人に呟く。

「だって、可愛いじゃん」

そう言う雅人の肩をレイが抓った。

音楽に合わせて揺れながら、二人は身体を密着させる。
賑わっているフロアでは、稀ではない。
レイの耳元で、雅人が言った。


「外に出ようぜ」


二人は、人だかりを抜けて外へ出て行く。

忙しさの中で、美咲は気付いていなかった。



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