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隣人

第2章 芽生え  5月

その夜、日付が替わる頃、吉田はお店に現れた。
「吉田さん、いらっしゃい」
「美咲ちゃん今朝はどうも(笑)」
マスターがキョトンとして言った

「何なに~意味深かよ」
「はは!まあね。アパートが一緒だって今日気付いたのよ」
「えっそうなの!」
マスターと雅人も驚いた様子だった。
「それも、隣」
ブハハハ!
「今頃かよ!(笑)」
「吉田さん、オレまだ部屋に招待されてないから、変な男入ってたらすぐ教えて!」
「もう!雅人はすぐそうゆうこと言うんだから!」
「まあ、変な男付かないように、今日は送って帰るよ」
「あざーす」
安心した様子の雅人を横目に、ときめいている美咲がいた。

『一緒に帰れる!?』

pm2:30
「今夜は残業だね。30分(笑)」
「吉田さんがマスター煽るからじゃないですか」
横に並んで歩くと、吉田の顔を見上げる形になる。
雅人とは目線が一緒なので、心なしか女の子女の子している美咲。
二人きりという緊張からなのか、憧れの先輩を前にしている様な、そんなドキドキ感がある。

「吉田さんの奥さんって綺麗ですよね。どこで知り合ったんですか?」
「ありがとう。出会いは、職場だよ。妻はいわゆる寿退社組み」
「お子さんは?」
「ん~まだ予定ないかな」
「きっと子供が産まれたら可愛いんだろうな。美男美女だし!」
「それを言ったら、美咲ちゃんたちもだろ?」
「いえいえ(笑)私は、まだ子供だから」
「二十歳過ぎたら大人だよ」
「あ、言ってませんでしたね。ホントは18なんですよ」
「え~、ひと回りも違うのか…オレおじさんじゃん…」

話が温まってきたところで、アパートの前まで来た。

「おじさんは今日の散歩が楽しかったよ。ありがと、おやすみ」
そう言って、美咲の頭をポンポンすると、彼は部屋に入って行った。

全然おじさんじゃないのにな。

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