君がくれたぬくもり
第53章 待ち人
もう傷つくのは嫌だよ…
「陽菜…?」
「………見ないでぇ……ッ」
泣いてる顔を見られたくなくて岳にしがみつく。
しかし岳は陽菜の肩を掴み、自分から引き離そうとした。
「顔見せろ。」
「嫌っ…変な顔だもん…」
陽菜は首を横に振り、拒む。
すると、
「あっ…」
岳は無理矢理陽菜の顔をクイッと持ち上げ、
顔を覗き込ませた。
「………っ…」
「陽菜……」
顔を見るとさらに涙腺が刺激され、
ポロポロと涙が止まらなくなってしまった。
「ごめ……んっ……」
慌ててまた俯く。
すると岳は、先程よりも強く陽菜を抱きしめた。
―――――
―――――…
香水の匂いとタバコの匂いがする。
陽菜が1番落ち着く匂い…。
「泣かせてごめんな…」
何度も何度も背中をポンポンと叩く。
―――そう思うなら…
―――そう思うなら戻ってきてよ…