君がくれたぬくもり
第53章 待ち人
言いたいのに
言えない…。
なんて臆病なんだろう。
“無理”って言われるのが怖いのだ。
その時、岳がため息をついた。
「はぁ…やっぱ好きだわ…。」
「えっ……」
岳は陽菜を抱き寄せたまま、砂浜の上に座る。
陽菜は岳の足の間に挟み込まれるように座らされた。
「ごめんな…俺、お前を守りたくて別れた。」
「………?」
陽菜を守りたくて…?
どういう意味…?
「付き合わないと陽菜を危ない目にあわせるって、千夏に脅されてて……
前に誘拐されたことあったろ?
あれ、千夏が仕向けたんだ。
俺、あん時みたいに陽菜を怖い目に合わせたくなくて…
だからあいつとヨリ戻した。」
「………。」
そうだったんだ…。
千夏ちゃんが………
あの誘拐事件も千夏ちゃんの仕業だったんだ…。
陽菜が嫌いってわけじゃなかったんだね……。
陽菜を守るためだったんだね………
よかった…
陽菜はほっとした。