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一方的に自己紹介をしたあと、富士見は黙って千紗の顔を見る。

それが千紗の自己紹介を促す行為と気づくまで二秒程度かかった。

「あ、あの……私は一年の佐倉千紗です……」

流れで思わず名乗ってしまう。

勝手に人の泣き顔を描く怪しい人物と思いながらも富士見のどこか人を安心させる 雰囲気に飲まれていた。

「さくらさん……さくらちささんか……いい名前ですね。この絵はあげます」

富士見はスケッチブックをびゅっと破り、千紗のスケッチを手渡した。

「え、いや、あの……」

「君は凄く絵になるよ。よかったら今度放課後美術室に来て。モデルになって欲しいから。じゃあ」