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それでも恋するドM娘

第8章 代用品

「ちょっ……ちょっと待ってください」

千紗がパニクってるのを無視し、富士見はさっさとテトラポットを降りて、停めてあった自転車に乗り、立ち去ってしまう。

千紗は泣いた自分が描かれた紙を持って、その後ろ姿を見送るしかなかった。



スカートについた砂を払い、貰った絵を鞄にしまって千紗は家路についた。

サイレントモードにしていたスマホを見ると寺井からの着信履歴が並んでいた。

千紗は惜別の思いで唇を噛み、携帯電話の電源をオフにした。



翌朝、さすがに今日は寺居と顔を会わしたくないという気持ちが強かった。

とはいえ逃げていても仕方がない。

「よしっ……」

千紗はピシッと両手で頬を叩き、覚悟を決めて家を出た。

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