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それでも恋するドM娘

第12章 罪悪感の根底

「同じだよ。理由も聞かされず自分でない他の男と付き合いはじめても、その幼馴染みの彼は傷つくんだから」

「それは……そうかもしれないですけど」

「生きてるからには他人を傷つけてしまうと言うのはね、佐倉さん。確かに言い過ぎだし、詭弁でもある。そんなことを言ってたら、コンビニのサンドイッチでさえ何かの犠牲の上に成り立っているなんて話に展開してしまう」

シュッシュッと音を立てて富士見はデッサンを続ける。

「佐倉さんはサンドイッチを食べるとき罪悪感を感じながら食べたりはしないだろう?
要はそういうことだよ。僕が言いたいのは。
生きてるからには誰かを傷付けるってのは業の深さを反省しろ、なんて説教じゃなくさ。無関心でいたら? って話だよ」

「無関心……?」

「佐倉さんは姫野君を傷つけたことより、傷つけて自分がひどいやつだと思われているわじゃないかということに怯えているんじゃない?
いいじゃない? 他人にどう思われようが。
他人によく思われたいなんて思わなければ苦しみも減る。
佐倉さんは自分で最低なことをしたと思ってるんでしょ? だったら罰を受けて最低な奴だと思われなよ」

富士見は描き終わったのかパタンとスケッチブックを閉じる。

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