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恋のかたち

第4章 約束・・再新

涙でヒリヒリと痛む目元を拭うこともせず、結局たどり着いたのは行き場も帰る場所も定まらない優愛にとっての唯一残された邸宅だった

玄関先に人影があることに気づき、ようやく疲労しきった足を止めた

薄暗い中で、玄関先の壁に背中を凭れている男だとわかる

立ちつくす優愛へ男の声がかかる

「よう、お出かけだったのか?」
その声は紛れもなく、あの男の声で、忘れようにも記憶に新しく忘れ難い男のものだった

「今日は、帰ったんじゃないんですか?」
怪訝な声色で優愛は玄関先の声の主に言った

「ふぅん・・置いてかれて拗ねてんのか」
嘲笑しているように見える男に、頭がカッと熱くなるのを感じたが、わざと気づかないふりをして応えた

「余程、暇なんですね。私だって1人で出歩きますよ」

男は一瞬驚いた顔をしたが直ぐにいつもの澄まし顔に戻った
「へぇー、生意気。さっきとは別人みたいだぜ?淫乱ちゃん」
その言葉には、流石に限界だったようで
駆け出した優愛は男に向かい、自分の背丈より大きい男に、爪先立ちで更に腕を伸ばし、出る限りの強さで思い切り頬を叩いた

男も流石に面食らったようで、口が開いている

興奮が冷めず、はぁはぁと呼吸し、生気を取り戻した強い眼差しで男を見上げる

頬を押さえ、驚いた男の顔はだんだんと笑みへと変わる

その様子に驚きと動揺が優愛を襲う

もう一度手を振り上げた優愛の手首を軽く男に捕られ、体が男へと引き寄せられた
 

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