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恋のかたち

第8章 パーティー

出入り口の扉が近づく

「優愛!!!」
大きな声で名前を呼ばれ、反射的に声の方へ顔を向けた

優愛の瞳には、秋豊の顔が映る
ドクっと心臓が高鳴り、体がキュッと縮むのを感じた
喉が詰まって声にならない

走りよった秋豊は燕尾服を靡かせ、その様に思わず目を奪われた

「!遥!?どうしたんだ?優愛?」
驚きを隠せない秋豊が2人を交互に見た

「あれ?兄さん・・この子を知ってるの?」
友好的で先ほど優愛を強引に抱いた男とは思えないほど、穏やかな笑顔で秋豊に話す

握った手はギュッと強く、嫌な心臓音に優愛の緊張が高まる

「俺の秘書だよ。優愛行くぞ。じゃあ、遥またな・・」
そう言うと、優愛の空いてる手を自分に引いた

優愛の体が秋豊に引き寄せられそうになったが、離さない握られたままの手は遥に繋がったまま

「おい、遥、手を離せ」
「嫌・・って言ったら?」
「!どういう意味だ?」
秋豊の通常の比にならない氷のように冷ややかな口調と、刃物の切っ先を連想させるような眼差しに優愛はぞくっとした

秋豊に握られた掌に伝わる温かみに胸がきゅんと疼いてまた悲しくなる

ぐんっと、遥に握られた手が引かれ一歩遥の方へよろめいた

パッと手を離したのは秋豊だった
優愛は、離れる秋豊がスローモーションに映って、遥の方へ身体ごと傾いていく
遥も、強く引いていたせいで少しよろめいていく
遥の手の力が弱まり、そのまま体が遥へ行く
その寸前一歩踏み出した秋豊が優愛の身体ごと持ち上げた

肩から抱えるように抱き寄せられた優愛の視界はロビーに用意された腰掛け椅子の様子

乱れなく、テーブルに備えられた高級感溢れる佇まいと、大きな花瓶に豪華に生けられた生花

がっしりと片手で優愛を抱える秋豊の腕の感触を腰に感じ、ムスクの香が鼻腔をくすぐる

にらみつけた秋豊は少しだけ笑う
その笑みが挑発的で、色気すら漂わせている

優愛には見えていないが・・

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