
NO VOICE LOVE
第1章 はじまりは、すぐそこに
ライブハウスのドアまで近寄ると、
重低音が心地よく聞こえる。
両開きの重いドアを開くと、
賑やかな音が身体を包む。
この、音楽に包まれる感覚が
とても好きだった。
スポットライトで照らされたステージの
上のアンプから溢れ出す音。
身体の奥で、
この感覚を歌にしたいという気持ちが
疼き出す。
「遅せぇよ旭(アサヒ)!」
ステージの上で、手招きをするのは
ギター担当の和也(カズヤ)。
「とっくにリハ始まってんぞ!」
和也の後に続いて、
ドラムセットの奥から孝太(コウタ)が
身を乗り出しながら言う。
