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電話ボックス

第4章 四

退院してから、僕は自分を救ってくれた友人を訪ねた。

彼の話ではここのところ僕の様子がおかしかったという。

それで気になっていたと。

あの日、彼は妙な胸騒ぎを感じたと言った。

僕に連絡を取ろうとしても通じない。

それで訪ねて来たところベッドの中でぐったりとなった僕を発見したという。

驚いた彼はすぐに救急車を呼び、僕を病院に運んでくれた。

発見がもう数時間遅かったら死んでいたかもしれない。

「あの時…ここからお前を連れ出す時、変な声が聞こえた。言わない方がいいと思ったけど…」

彼はそう言って言葉を切り、考えるように宙を睨む。

「言っておく。あの時俺の耳にはこう聞こえた『逃げられた。次は逃がさない』って…お前自分じゃ覚えてないみたいだけど、時々変なこと言ってた。で、思ったけど、ここよくないんじゃないか?」
……。

彼の言葉に僕は思い出した。

部屋の中に女がいた。

そう、あの電話ボックスの中にいた女だ。

女は一人は寂しいと言ったように思う。

だから僕を連れて行くと。

電話ボックスに入って来いと。

僕は何度もそう言われ、それを意識の下に封じ込めた。

だからこそ僕はあそこが気にかかり、また怖かったのだ。

そして僕は彼女の待つあの場所に行き、死にかけた。

でも僕は助かった。

彼女の手から逃れたのだ。

別れ際彼が言った。

「お前引っ越した方がいいよ」と。

僕もそう思う。

一度は逃げられても、二度目はわからない。

彼女はあそこにいる。

あの場所で僕を待っている。

次も逃げられるか自信がない。

その時は――。

僕は彼女に捕まり、共に逝くことになるのだろう。

そして僕も彼女と同じように誰かを引きずりこむようになるのかもしれない。

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