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RAIN

第4章 再会《翔side》

「濡れて帰ってきたの?」
シャワーの音が奏でる浴室の中では、ドアの向こうからの姉貴の声は聞きにくい。
返事を返さない俺に痺れを切らしたのか、姉貴はしばらくして去って行った。
やはりいくら姉弟といえど異性同士である為に、姉貴もドアを開けるわけにはいかない。俺から反応がないことに、ここで返事は期待できないと判断したのだろう。

やっとうるさい声もなくなり、再びシャワー音が響き、俺はシャワーの水滴を受けながらまたあの人のことを思う。


いつまでも俺の心を占めるあの人の面影。
雨になんか奪われたくない。雨に何度も嫉妬して、憎んで……。

あの人に会いたい。あの人に恋い焦がれているという自覚。それは封印するにはあまりにも深すぎて、無理に自分の心を偽るなんてできない衝動にあった。

明日、もう一度あの公園に行こう。
いるかどうかなんて保証はない。それでも会える確率に賭けたい。
もう一度あの澄んだ瞳に、あの綺麗なあの人に会えることを祈って......。



両頬を両手で気合をいれるためにバンバンと強く叩く。
自分の中で決意を固めると、シャワーのノズルを回し、足早で風呂場を後にした。


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