
RAIN
第6章 拒絶《拓海side》
雨はいつの間にか止んでいた。気まぐれな雨模様だ。おそらく少し経てば、また降る確率は高い。
時刻は午後五時近く。日照時間は延びたが、それでも陽が落ちればあっという間に暗い世界と変化してしまう。
神崎くんとアパートを後にしてから俺は自分から話し掛けることは出来るだけ避けた。それはこれから実行しようとすることへの恐れからくる余裕のなさからかもしれない。
俺の内心も知らず、無邪気に神崎くんは今も笑顔を絶やさない。どこまでも俺に対して好奇心を持ってくれていることが、その笑顔から読み取れる。そんな彼だからこそ俺の心は自己嫌悪に陥ってしまう。
「バイトってどういうのですか?」
半分上の空にあった俺に、神崎くんの声がかすかに届いた。
「……えっ?」
馬鹿みたいな反応をしたものだ。
「いえ、拓海さんがしているバイトってどんなのかなと思って」
しかし嫌な顔一つせず、神崎くんは同じ質問を繰り返した。
「……あ、ああ……、居酒屋の店員だよ」
一言で済ませば、神崎くんの笑みがまたこぼれる。
「うわぁ……、居酒屋って大変じゃないですか? お客さんの相手するって大変そうだよなー……」
先ほどからなんでも感慨深く反応を返す神崎くんにただ苦笑するしかない。
俺からすればオーバーとしかうつらないその反応の嵐だが、彼にすれば心底未知の世界観なのかもしれない。
そんな反応から、彼が暖かい家族に囲まれ、そして愛情を注がれているのがよくわかる。一人暮らしの孤独感や、バイトしなければ生活できない環境など、彼からしたら想像もできない状況なのかもしれない。神崎くんの無邪気ともとれる笑顔が総てを語っていた。
だからこそ俺は決心を強く固める。
「それじゃ俺、バイトに遅れるとヤバいからここで……」
早く離れたい。いや、離れなくちゃいけない。
時刻は午後五時近く。日照時間は延びたが、それでも陽が落ちればあっという間に暗い世界と変化してしまう。
神崎くんとアパートを後にしてから俺は自分から話し掛けることは出来るだけ避けた。それはこれから実行しようとすることへの恐れからくる余裕のなさからかもしれない。
俺の内心も知らず、無邪気に神崎くんは今も笑顔を絶やさない。どこまでも俺に対して好奇心を持ってくれていることが、その笑顔から読み取れる。そんな彼だからこそ俺の心は自己嫌悪に陥ってしまう。
「バイトってどういうのですか?」
半分上の空にあった俺に、神崎くんの声がかすかに届いた。
「……えっ?」
馬鹿みたいな反応をしたものだ。
「いえ、拓海さんがしているバイトってどんなのかなと思って」
しかし嫌な顔一つせず、神崎くんは同じ質問を繰り返した。
「……あ、ああ……、居酒屋の店員だよ」
一言で済ませば、神崎くんの笑みがまたこぼれる。
「うわぁ……、居酒屋って大変じゃないですか? お客さんの相手するって大変そうだよなー……」
先ほどからなんでも感慨深く反応を返す神崎くんにただ苦笑するしかない。
俺からすればオーバーとしかうつらないその反応の嵐だが、彼にすれば心底未知の世界観なのかもしれない。
そんな反応から、彼が暖かい家族に囲まれ、そして愛情を注がれているのがよくわかる。一人暮らしの孤独感や、バイトしなければ生活できない環境など、彼からしたら想像もできない状況なのかもしれない。神崎くんの無邪気ともとれる笑顔が総てを語っていた。
だからこそ俺は決心を強く固める。
「それじゃ俺、バイトに遅れるとヤバいからここで……」
早く離れたい。いや、離れなくちゃいけない。
