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RAIN

第9章 告白2《拓海side》

呆然としている俺にふわりと何かが触れてきた。温かい何かに包まれた感触はあったが、頭が働いてない俺は、それがなんなのか理解できてなかった。


「……拓海さんが好きだ……」


耳元でそんな言葉が届いて、嗚呼、この温かい温もりの正体が神崎くんなのだと漸く理解する。

「拓海さんがいないと俺は駄目なんだ。拓海さんのいない世界なんて俺には耐えられない……」

なんてさみしそうに、切実な声音で囁くのだろうか。顔を俺の肩にうずめているから、今彼がどんな顔でその台詞を口にのせているのか、俺にはわからない。



神崎くんの告白に徐々に冷静を取り戻しつつあった。

だけど彼がどうしてそんな行動に出たのか、冷静になればなるほど不可解が増してくる。


どうすればいい? 俺を抱きしめて顔を埋めている彼に、俺はどうしていいものか思案する。
まだ彼が離れる気配は一向にない。

他人から接される経験があまりにない俺はこのように愛を捧げられることに不慣れであるため、どう接すればいいか戸惑ってしまう。
ただ彼の温かい体温に包まれ、それにまだ甘えたいと思う俺もいた。

しばらくお互いに動くことも、声を掛けることもなく沈黙を守っていたが、それもそんな長いものではなかった。

「……拓海さん……」
ゆっくりと埋れていた顔をあげた神崎くんの瞳が再び俺へと向けられた。
「俺のわがままだってことは分かってます。またこの感情が拓海さんにとって迷惑で気持ち悪いものだってことも承知してます。……それでも俺は拓海さんと離れたくない」
意思の強い、揺るぎない神崎くんの想いが伝わってきて、俺は自分の決心が鈍るのを感じ取っていた。

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