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RAIN

第10章 裁かれた母子の行末《拓海side》

「俺なんか何もできないからマジで尊敬だよ。きっとご両親の育て方がよかったんだろうなー……」
感慨深く俺の家庭を勝手に想像する翔に、俺は返す言葉もなく、ただ押し黙ってしまう。

「……拓海さん?」
俺が沈黙したことに不審に思ったのか、翔が小さな声音で伺う。
「あ、ごめん……」
心配させてしまったことに詫びる。
「翔の家族は?」
さりげなく話題を翔の家族へと転嫁する。
自分に振られたことに翔が慌て始める。多分照れが入ってるのだろう。
「俺? 俺ん家は母親とうるさい姉貴の三人家族だよ」
「三人?」
翔の口から父という単語がなかったことに、俺は疑問を顕にする。
「あー……、親父は俺が八歳の頃に癌でなくなったんだ」
あっけらかんと答える翔に、今度は俺が慌てる番となった。
「ごめん! 俺……無神経なことを……」
「あ、そんな気にしないでよ!」
ブンブンと両手を振って気にさせまいとする翔に救われる思いだ。
「親父いなくて正直寂しい時とか不便なこともあるけど、でもお袋や姉貴がいるからね」
罪悪感を感じさせまいとしてるのが伝わってくる。

翔の笑顔を見ていると、彼は家族の愛に包まれたと感じさせる。翔は間違いなく“光“に属する人間なのだ。

「暖かい家族なんだろうな」
羨望を含めながらいえば、翔はほんのり頬をそめている。

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