
夢幻の蜃気楼
第4章 “蒼き魔王”
それはあまりにも一瞬だった。誰もが我が目を疑う。状況が反転した当人は、自分が被害者になったことに気付くのに、数秒の間をもった。
ただ状況をしっかりと捉えてるのは、それを作った本人、綺麗な少年だけだった。
突然悲痛な叫び声をあげた男に、僕と赤毛男は何事かと見上げる。
そこには少年に片腕を後ろ手にねじ伏せられて、苦痛に歪んでいる男の姿があった。あの少年の体躯からどこにそんな力が秘められていたのか。また状況を逆転させるだけの早業に、僕たちは信じられないものでも見たように瞳を大きく見開くしかなかった。
そんな僕たちとは対象的に、少年は男を拘束したまま、余裕の笑みで僕たちを見据えていた。それはあまりにも妖艶に見えて、まるで悪魔の微笑のように感じられた。
「形成逆転といったところか?」
楽しそうに述べる少年の表情に、僕は今も何が起こっているのか状況を把握できずにいた。
「余裕こいてるから痛い目に合うんだ。そこの兄ちゃんはともかく、見た目で判断するなって学習したろ?」
まさしく少年の態度は上から目線。その前で男が苦悶の表情で呻き声を微かにあげている。それは対象的な二人に、やっと赤毛男が事態を把握した。
「て、てめぇ……、一体何者だ?」
男が少年の正体を促す。
男の質問に少年がニヤリとさらに笑みを濃くした。
「別に名乗ってもいいけど、あんたら俺の正体知ったら後悔すんじゃねえの?」
意味深な科白を吐く少年に赤毛の男が苛立つ。
「ふざけんじゃねえ!?」
だが今度は少年の目付きが変わる。
「ふざけてるのはどっちだ? 人の庭で好き勝手してるんじゃねえよ」
不敵な笑みから凄みのある表情へと豹変させた。今までの飄々とした雰囲気は一気に消え、今あの少年から発しているのは僕が感じたことのない“恐怖”を与える黒と称しても過言ではないオーラ。きっと僕とそんなに変わらない年齢だろう彼から放たれる威圧的なオーラに、僕だけではなく二人の男も言葉に詰まる。
ただ状況をしっかりと捉えてるのは、それを作った本人、綺麗な少年だけだった。
突然悲痛な叫び声をあげた男に、僕と赤毛男は何事かと見上げる。
そこには少年に片腕を後ろ手にねじ伏せられて、苦痛に歪んでいる男の姿があった。あの少年の体躯からどこにそんな力が秘められていたのか。また状況を逆転させるだけの早業に、僕たちは信じられないものでも見たように瞳を大きく見開くしかなかった。
そんな僕たちとは対象的に、少年は男を拘束したまま、余裕の笑みで僕たちを見据えていた。それはあまりにも妖艶に見えて、まるで悪魔の微笑のように感じられた。
「形成逆転といったところか?」
楽しそうに述べる少年の表情に、僕は今も何が起こっているのか状況を把握できずにいた。
「余裕こいてるから痛い目に合うんだ。そこの兄ちゃんはともかく、見た目で判断するなって学習したろ?」
まさしく少年の態度は上から目線。その前で男が苦悶の表情で呻き声を微かにあげている。それは対象的な二人に、やっと赤毛男が事態を把握した。
「て、てめぇ……、一体何者だ?」
男が少年の正体を促す。
男の質問に少年がニヤリとさらに笑みを濃くした。
「別に名乗ってもいいけど、あんたら俺の正体知ったら後悔すんじゃねえの?」
意味深な科白を吐く少年に赤毛の男が苛立つ。
「ふざけんじゃねえ!?」
だが今度は少年の目付きが変わる。
「ふざけてるのはどっちだ? 人の庭で好き勝手してるんじゃねえよ」
不敵な笑みから凄みのある表情へと豹変させた。今までの飄々とした雰囲気は一気に消え、今あの少年から発しているのは僕が感じたことのない“恐怖”を与える黒と称しても過言ではないオーラ。きっと僕とそんなに変わらない年齢だろう彼から放たれる威圧的なオーラに、僕だけではなく二人の男も言葉に詰まる。
