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夢幻の蜃気楼

第4章 “蒼き魔王”

明らかに纏っている少年の雰囲気が変わったことに、全員が絶句する。今までの妖艶とも取れる少年の姿は今はなく、そこにあったのは“殺意”という畏怖の対象しかなかった。

赤毛の男は恐怖で顔を引き攣りながらも、少年から目線を外さなかった。
だが数秒後、赤毛男の反応が大きく変わる。
「まさか…………」
唇が細かく震え上がる赤毛男。
「その碧い瞳……、“蒼き魔王”……?」
赤毛男が発した聞きなれない名称に、僕だけがぽかんと置いてきぼりを食らった感覚がする中、あの少年に動きを封じられている男も赤毛男と同様に、ギョロッとした瞳を更に見開いていた。

この二人の動揺から、あの綺麗な少年が只者ではないらしいことだけは薄々理解は出来ていたが、そこまで恐れる理由がいまいちわからない僕はただ少年へと意識を持っていく。


「しかし“蒼き魔王”がこんなとこにいるわけねぇ……!」
自分から発したはずなのに、それを否定する赤毛男に少年が抑揚のない声音で最後の止めをさす。
「お前ら、俺の庭を荒らした罪はでかいぜ。覚悟は出来てんだろな?」
瞳を細め、威嚇する少年の殺気とも取れるオーラに、二人の男は傍目から見てもわかるぐらいに、ガタガタと全身を大きく震わせた。恐怖のために歯までカタカタと音を鳴らしている。特に少年に腕を拘束されている男は可哀想なほどに震えていた。

「ゆ、許してくれ……」
震えた声で許しを乞う髑髏のピアスをした男。
そんな男に少年がチラリと横目で見やるだけに留まったかと思うと、すぐに拘束していた男の腕を放した。











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