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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第2章 麗しの蓮の姫

 ファンジョンは何がそんなにおかしかったのか、ひとしきり癇に障る笑い声を上げ続けた。
「麗しの浄連が厠だと? こいつは滑稽だ。生きた人形のように美しいお前がそこら辺にいるありふれた人間どものように厠に行くとは、こいつはまた笑える」
 一瞬の沈黙の後、その場が一斉に笑いに包まれた。ファンジョンの取り巻きたちの下卑た視線が浄連に注がれるのが彼女自身にも判った。
「俺がそんなその場逃れの嘘を信じるとでも?」
 ファンジョンは突如として笑いをおさめると、鋭い一瞥を彼女にくれた。
 浄連は今度ばかりは腹に据えかね、負けじとばかりにファンジョンをきついまなざしで見据えた。
「申し上げておきますが、私は人形ではございませんし、もちろん、皆さま方と同じように食事をし、眠りも致します。当然ながら、厠にも参ります。それが、そのように大笑いなさるほど面白いことなのでしょうか? 若さまは嘘だとお思いになりたいのなら、それはそれで構いはしません」
 そう言って前に進もうとすると、突如として、ファンジョンに後ろから抱きすくめられた。
「怒るな、怒るな。皆がそちをどのように申しているかは、そなたとて知らぬわけではあるまい? 〝麗しの浄連〟、まだ見習いにもならず、正式に見世にも出ぬ前から、そのように世間の噂となるほどの美貌と色香を持つお前がそこいらの妓生と同じだとは誰も信じられぬであろうよ。のう?」
 相槌を求めるように取り巻きを一巡に見渡すと、早速、利に聡い彼等が意気揚々お追従を並べ始める。
「まっこと、ファンジョンの言うとおり。〝麗しの浄連〟とその清らかにして艶な美貌で名高い浄連の口からまさか厠にゆくなどと興醒めの言葉を聞くとは私も全く思わなかった」
 と、これは、ファンジョンのすぐ隣―、つまり、この男と浄連がファンジョンを間に挟んで座っていたことになる―にいた男がおもねるように言った。

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