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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第5章 天上の苑(その)

「浄蓮なら、必ずなれるよ。朝鮮一と呼ばれる最高の妓生に。もっとも、その果てしない夢も、もし、そなたが私の求婚を受けてくれれば、かなり実現は難しくなるかもしれない」
 それは、と、浄蓮はどきまぎしながら、うつむいた。
 男の自分が準基の妻になるなど、絶対にあり得ない話だ。たとえ、どれほど準基が浄蓮を好きだと言ってくれたとしても―。
 こんなに好きなのに、大好きなのに。
 眼の前のこの人とは一生涯、結ばれない。
 そう思うと、また、別の意味で涙が溢れてくる。
 たった今まで身近にいた準基が今は、遠い手の届かない場所にいるように思えて哀しかった。
 準基の方は、浄蓮の戸惑いを別の意味に解釈したようだ。
「ああ、泣かないで。別にそなたを困らせるつもりで言ったわけではないんだから。私なら、待つよ。浄蓮が私の許に来てくれるまで、ずっとずっと待ってる。浄蓮がどうしても妓生になりたいという夢を諦められないのなら、私は、それでも良いと思っている。私の家は代々、中級官吏が良いところのたいした家門ではないが、それでも両班の端くれだ。今のところ、家門は私が継ぐことになっているゆえ、私が家門を棄て妓夫になるわけにはゆかない。だから、そなたが気の済むまで、妓生でいれば良い。私はそれまでは一人の客として翠月楼に通うよ。そして、そなたの気が済んだ時、改めて私の求婚を受け容れてくれれば、十分だ」
「そんな―、そんな話って」
 浄蓮は泣きながら首を振った。
「若さまは、どこまでお人好しなのですか? 妓生になるということは、どういうことか考えろとおっしゃったのは、若さまご自身ではありませんか? 若さま、ひとたび妓生になれば、私も客の殿方に膚をゆるさねばならない立場になります。若さまは、それでも良いのですか? 他の男が触れた女でも、使い古され、さんざん汚された身体でも―」

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