麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】
第5章 天上の苑(その)
「浄蓮」
準基の声がいつになく掠れている。
「やめ―」
このままでは、危険だ。本来の準基は、厭がる娘の身体を無理に奪うような男ではない。しかし、雨に降り込められた洞窟の中で、若いひと組の男女が二人きりという極めて親密な状況は、あまりにも閉鎖的で官能的だ。
しかも、準基は浄蓮という娘に、想いを寄せていると、はっきり当人の前でも口にしているのだ。これ以上進むことを許せば、若い盛りの準基が止まらなくなるのは判っていた。
止めてと言いたいのに、ずっと間断なく塞がれたままの唇は言葉を紡げない。
その先を考えるのが、浄蓮には果てしなく怖かった。できることなら、浄蓮は、〝彼が慕っている娘〟のままでいたかった。その気になるまでずっと待つと言ってくれる彼には、酷(むご)いことかもしれないが、いつまでも〝浄蓮〟という娘だと思っていて欲しい。
だが、準基の欲望を止められなければ、浄蓮が実は女ではなく男だとバレることになる。
唇がやっと離れ、長すぎる口づけから解放されたのも束の間、準基の手が胸に巻いてある布にかかった。
「いや―!!」
浄蓮は涙を振り零しながら、烈しく首を振った。
突然、ひときわ大きな爆音が轟き渡った。
今まで以上に鮮やかな光が禍々しいほどに黒く塗り込められた空を走る。まるで闇夜にひらいた妖しい毒花のようだ。
「浄蓮」
準基が茫然として浄蓮を見た。
「済まない、浄蓮」
彼は愕然としてうなだれ、浄蓮から手を放した。
「私は―どうかしていたようだ」
浄蓮は身体を小刻みに震わせ、泣いていた。
準基の声がいつになく掠れている。
「やめ―」
このままでは、危険だ。本来の準基は、厭がる娘の身体を無理に奪うような男ではない。しかし、雨に降り込められた洞窟の中で、若いひと組の男女が二人きりという極めて親密な状況は、あまりにも閉鎖的で官能的だ。
しかも、準基は浄蓮という娘に、想いを寄せていると、はっきり当人の前でも口にしているのだ。これ以上進むことを許せば、若い盛りの準基が止まらなくなるのは判っていた。
止めてと言いたいのに、ずっと間断なく塞がれたままの唇は言葉を紡げない。
その先を考えるのが、浄蓮には果てしなく怖かった。できることなら、浄蓮は、〝彼が慕っている娘〟のままでいたかった。その気になるまでずっと待つと言ってくれる彼には、酷(むご)いことかもしれないが、いつまでも〝浄蓮〟という娘だと思っていて欲しい。
だが、準基の欲望を止められなければ、浄蓮が実は女ではなく男だとバレることになる。
唇がやっと離れ、長すぎる口づけから解放されたのも束の間、準基の手が胸に巻いてある布にかかった。
「いや―!!」
浄蓮は涙を振り零しながら、烈しく首を振った。
突然、ひときわ大きな爆音が轟き渡った。
今まで以上に鮮やかな光が禍々しいほどに黒く塗り込められた空を走る。まるで闇夜にひらいた妖しい毒花のようだ。
「浄蓮」
準基が茫然として浄蓮を見た。
「済まない、浄蓮」
彼は愕然としてうなだれ、浄蓮から手を放した。
「私は―どうかしていたようだ」
浄蓮は身体を小刻みに震わせ、泣いていた。