麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】
第5章 天上の苑(その)
黄昏刻の陽光が周囲の風景を蜜色に染め上げていた。
「浄蓮、一つだけ訊きたいのだが」
唐突に呼ばれ、浄蓮はピクリと身を震わせた。準基の様子から見て、もう安心だとは思うものの、どうしても彼の動きに逐一、反応してしまう自分が情けない。
準基の面に微苦笑が浮かぶ。
「大丈夫だよ。もう何もしないと約束しただろう?」
「は、はい。何でしょう?」
準基の顔を見つめると、彼は自分で呼びかけておきながら、狼狽えたように視線を背けた。
「私が訊きたいのは、皇秀龍のことだ」
「皇秀龍さま、ですか」
予期せぬときに持ち出された義兄の名に、どきりとする。
そう、と、準基は頷いた。
「本当は結婚して欲しいと言う前に訊こうと思っていたんだけれど、どうしても口にできなくてね。そなたの口から、私の怖れている応えが出てきたら、もう求婚もできくなってしまうから」
「あの―、皇秀龍さまについて何をお訊ねになりたいのでしょう?」
準基は少し口ごもり、後は決心したように、ひと息に言った。
「あの男は、本当は、浄蓮の何なんだ?」
いよいよ来るべきときが来たのだ。準基の前で、浄蓮は秀龍と抱擁し、口づけまで交わした。もちろん見せかけのものにすぎなかったけれど、今日ここで求婚までした準基が秀龍について触れない方がむしろ不自然だったのだ。
浄蓮は自分でも知らない中に唇を噛みしめた。
―皇家の若さまは、私の大切なお慕いしているお方です。
ここでそう言ってしまえば、すべては終わるはずだ。
「浄蓮、一つだけ訊きたいのだが」
唐突に呼ばれ、浄蓮はピクリと身を震わせた。準基の様子から見て、もう安心だとは思うものの、どうしても彼の動きに逐一、反応してしまう自分が情けない。
準基の面に微苦笑が浮かぶ。
「大丈夫だよ。もう何もしないと約束しただろう?」
「は、はい。何でしょう?」
準基の顔を見つめると、彼は自分で呼びかけておきながら、狼狽えたように視線を背けた。
「私が訊きたいのは、皇秀龍のことだ」
「皇秀龍さま、ですか」
予期せぬときに持ち出された義兄の名に、どきりとする。
そう、と、準基は頷いた。
「本当は結婚して欲しいと言う前に訊こうと思っていたんだけれど、どうしても口にできなくてね。そなたの口から、私の怖れている応えが出てきたら、もう求婚もできくなってしまうから」
「あの―、皇秀龍さまについて何をお訊ねになりたいのでしょう?」
準基は少し口ごもり、後は決心したように、ひと息に言った。
「あの男は、本当は、浄蓮の何なんだ?」
いよいよ来るべきときが来たのだ。準基の前で、浄蓮は秀龍と抱擁し、口づけまで交わした。もちろん見せかけのものにすぎなかったけれど、今日ここで求婚までした準基が秀龍について触れない方がむしろ不自然だったのだ。
浄蓮は自分でも知らない中に唇を噛みしめた。
―皇家の若さまは、私の大切なお慕いしているお方です。
ここでそう言ってしまえば、すべては終わるはずだ。