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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第2章 麗しの蓮の姫

「上に馬鹿がつくほど生真面目でお高くとまっているそなたが果たして今日、ここに来るかどうか。実は、俺たちは賭けをしてな。むろん、俺は来る方に賭けたが、中には絶対に来ぬと言い張った者もいた」
 ファンジョンは馬鹿にしたように言い、取り巻き連の顔を眺め渡した。
 皆、面白そうにことのなりゆきを高みの見物ときている。
「随分とつまらぬ賭けをするものだ。仮にも官職に就いて国より扶持を賜る者がそのような愚かなことしか考えられぬとは、この国の先行きも危ういものだ」
「な、何をォ?」
 ファンジョンの四角い顔が更にどす黒く染まった。
 任準基と呼ばれた若い男は平然と断じると、足早に近づいてきた。かと思うと、呆気に取られている浄連の前で、ファンジョンの手を掴み、無造作に捻った。
「無抵抗な若い娘に暴力をふるおうとするとは、全く男の風上にも置けぬ奴め」
「ツ、ツゥ」
 ファンジョンが呻き声を上げ、顔をしかめる。たいして力を込めているようには見えないが、その実、かなりの強い力で締め上げているのだろう。
 取り澄ましたファンジョンの顔が紅から蒼、更には醜い顔に玉の汗が浮かぶ。
 これはいけない。これ以上、やり続けたら、ファンジョンの腕は骨ごと粉々に砕けてしまうに違いない。
 このいけ好かない男がどうなろうと、浄連は少しも心は痛まないが、領議政の息子に再起不能の大怪我を負わせたこの若者がただで住むとは思えない。
「旦那(ナー)さま(リ)」
 浄連はすかさず突如として現れた男に言った。
「私のことなら、もう良いのです。あなたさまのお陰で、何事もなく済みましたゆえ」

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