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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

 もうちょっとにこっと笑えば、更に魅力的になるのにと、残念に思ってしまう。何も妓房に入るまでの自分のように、皺だらけの婆さんであろうが、襁褓をした赤児であろうが、女と見れば愛想を振りまけとまでは言わないが―。
 それでも、こんな男でも、かえって冷めているところが良いと騒ぐ女どもがたくさんいるのだから、世の中は判らないものだ。
「待たせて悪かったね」
 秀龍相手になると、浄蓮は女言葉を使わない。むろん、声もいつもは気をつけて高めの声を出しているのだが、義兄といるときは地声だ。
「また、絞られてたのか?」
「うん、何かボウッとしてばかりいてさ、今日はもう稽古は止めだって言われちまった。だから、これでも早めに切り上げてきたんだよ」
 無表情だった秀龍の顔がふとやわらいだ。
「なあ、英真―いや、浄蓮。良い加減にもう止めたらどうだ?」
「止めるって、何をさ」
 秀龍の言いたいことは判っている。だが、浄蓮はわざと気づかないふりをした。
「こんなことを続けて、何になる? そなたももう十六になる。私が父上に申し上げて、それなりの官職に就けるように口を利いても良いんだ。そなたの父上が亡くなられてから、もう六年だ。誰も、右相(ウサン)大(テー)監(ガン)の遺児が生きているとは思いはしない。そろそろ、そなたが世に出ても良い潮時だと―」
「止めてくれよ!」
 つい言い方がきつくなり、浄蓮はすぐに後悔した。
 秀龍の整った面に傷ついたような表情が浮かんでいる。
「ごめん。大きな声出したりして」
 浄蓮は自らを落ち着かせるように、大きく息を吸い込んだ。

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