どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第1章 カワイイ娘
「ぬぁっ!!」
まただ、今度は教室の真ん前で頭からスライディングするような形で転けてしまう。
床と皮膚が摩擦して、少しヒリヒリする。
幸い、外野=周りには誰も居なかった。
ホッと溜め息をついてから、何事も無かったように教室に入る。
自分の席に行って、鞄や勉強道具をまとめて居ると、どこからかシクシクと鼻を啜る音がする。
てっきり誰もいないと思ってた僕はビックリしてしまった。
「だ…れ…?」
聞いてから後悔した、だって、もしかしたら泣いているならほっといて欲しいかもしれない。…知らないフリをして欲しかったかもしれない…。
「…笠井歩だけど…」
少し不機嫌そうに呟かれた。
…え?
笠井歩くん?…て、こんなに声低かったんだ…。
知らなかった。
…というか、何とも言いようのないこの空気が嫌で、そそくさと教室の出口に向かうけど、何故か歩くんが僕に話しかけてきた。
「身長が低いからって、受けなんだって決めつけないで欲しいのに…皆…僕がバリたちだって言ったら…逃げるんだ…」
ん?
受け…?ばりたち…?
そのことに関して無知な僕は、なんと答えて良いか分からずただこう答えた
「あ…の、へぇ、大変だね。」
人気者の歩くんとだけあって、ついつい緊張して声が上擦る。
歩くんは、僕の答えに不満だったのか目を細めて、
「そりゃ大変だよ。地味眼鏡の穂浪(ホナミ)くんとは違うもん。」
…なんか…歩くんが怖い。
ちなみに僕は、北村穂浪(キタムラホナミ)という。
歩くんに名前を覚えて貰えて、ちょっと嬉しかったりする。
「今日だって、お金あげるからセックスさせてくれって言われたんだ。だから、良いよって言っていざシようって時に、僕が押さえながらタチ宣言したらダッシュで逃げて行っちゃったし…。こっちは射れる準備万端だったのにさ…。」
アイドルの歩くんから、信じられない言葉が聞こえたような気がする。