どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第5章 アイラくんの暴走
「うん…だから一緒には帰れないっ…ごめん、歩くん。」
「いいよ、ていうか僕も手伝おうか?」
放課後、歩くんに一緒に下校できないことを言うと、歩くんも手伝うって言った。
「ううん。僕が頼まれたから、僕が行かなきゃ。」
「でも、僕は穂浪と一緒に帰りたいんだ。だから、手伝うよ。」
「でも…」
「気にしないで、僕は穂浪と一緒に居たいだけだから。」
歩くんは、そう言って僕のおでこに軽くキスをした。
ジワァっと熱くなる僕の顔。
結局、歩くんと僕は一緒に体育館倉庫に行くことになった。
「でも、穂浪、頼み事されても嫌だったら断っても良いんだよ?無理して受け入れなくても。」
体育館倉庫について、中に入る。
でも、先生とか人影も見当たらなくて、真っ暗な中で、僕達はキョロキョロと見据えた。
「誰も居ないじゃん。」
「ぅーん…でも、確かに体育館倉庫にって…」
ガチャンッ…
「…」
「…?」
重い体育館倉庫の扉が閉まり、鍵を閉める音が聞こえた。
扉が開いていたことによって光があったのだけど、扉を閉められたので真っ暗になる。
「閉じ込められた。」
歩くんが冷静に呟く。
僕は対照的にアタフタと焦る。
「な…何でっ…扉っ閉まったっ!!」
「本当に真っ暗だな。」
「歩くんっ…扉っ…扉っ…」
僕がアタフタしながら、歩くんの姿を探すけど、歩くんからは応答も、気配も無くなった。
「歩…くん?…歩くん?…っふぐっ!?」
闇の中をうろうろとしていたら、後ろから誰かに口を塞がれて引きずられる。
「ふっ!!…ふぐぅ!!」
口に詰め物をされて、話せなくなる。
「穂浪?落ち着け。」
歩くんの声が、僕の居る反対側の方で聞こえる。
「んぐっ!!んー!!」
「あんま暴れると、殺すよ?」
首筋にヒヤッとした物が当てられる。
それが刃物だってことに気付くのにはそう時間はかからなかった。
ガクガク震えながら黙れば、僕を脅してる人はクスッと笑った。