どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第5章 アイラくんの暴走
「何で一人で来なかったの?」
ソイツは僕の耳に囁いた。
「んっ…ふ…」
「あぁ、口に入ってるから話せないね。暴れない叫ばないって約束できたら、口から出したげる。」
首を縦に振ると、ソイツは僕の頭を撫でて口から詰めていたものを出す。
「んぁっ…」
はぁはぁっと荒い息をする僕の頬を誰かが撫でた。
「ゃっ…」
顔を背けると、手首に違和感。
「な…に…?」
「縛って、逃げないようにしただけ。」
「おい、お前、穂浪に乱暴すんなよ。」
歩くんの声がまた聞こえる。
歩くんの声は安心できるけど、ちょっと息が荒いみたい。
「歩くんっ!!…歩くっん」
泣き出しながら、名前を呼ぶ。
「なぁに?…っあ゛っ」
歩くんは、僕に答えてくれるけど、卑劣な音が聞こえて、歩くんから呻き声。
「っ!!歩くん!!何されてるの!?っ僕っやだ!!」
「穂浪くん、落ち着きなよ。君の大好きな歩くんは、今、罰を受けてるだけだから。」
さっきと違う声が耳元で聞こえて、大袈裟にビクッと震える。
「ば…つ?」
「そう、今ね、歩くんは腕の骨でも折られてるんだよ?」
「ぃゃ…っ止めて!!」
僕は、身じろぎして暴れる。
「暴れたら、殺すよって言わなかった?」
痛い…刃先がちょびっとだけ刺さってる…
「っぅ…ごめっなさ…」
「僕の名前、分かる?」
声の主は、聞いてきた。
「…知らないっ」
「僕ね、隼人って名前なんだ。」
「…隼人…?」
なんで隼人くんがっ!!
だって…歩くんと仲良しなんじゃ
「僕ね、歩のこと大っきらいだったんだ。だから、いつか化けの皮を剥いで貶めてやろうと思ってたら、…僕が先に好きだった君と付き合い始める…なんて、許せない。」
「ゃあっ!!止めて!!」
隼人くんは、怒りのこもった声で言うと、僕を押し倒す。
「っくあっ…止めろ!!隼人!!」
「歩、君はいつも幸せだね?いっつも、願いが叶う。君は、僕の幸せを簡単に奪うよね。この眼鏡君も、地味だから、歩に目を付けられることはないって安心してたけど…見事に…、また奪ったね。」