どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第5章 アイラくんの暴走
「いやらッらめッ」
別に好きでもない人に身体を触られて感じてる僕は、きっとはしたない人間。
どんなに否定したって、僕は…感じてるんだ…
再び、涙がこぼれ始めたとき、
パリンッ!!
…硝子の割れる音…
一気に静まり返るこの空間。
「…お前…なんで…」
隼人くんは、割れた硝子の方を見ながら言う。
僕はまだ、眩しい光に慣れずに目を半開きにしている。
「…お前ら、こんな所でなにしてんだ?」
静かに、だけど確実に怒っていると分かるこの声は、アイラくんのものだった。
割れた硝子の向こう側に、腕に硝子が刺さり血が流れてるのも気にしないでただ此方を睨んでいる。
「ぇ…と…」
輝くんや、隼人くんがタジタジしている中、僕とアイラくんは目があった。
僕の格好は、全身はだけて口からは涎が垂れている状態。
アイラくんはフイッと目を逸らすと、
「歩、居ねぇ?」
って。
「あ…あ…歩なら…そこにっ」
隼人くんは、歩くんの居る方を指差す。
「そうか、居場所が分かって良かった。じゃあ、穂浪をこんなんした分、きっちり制裁させてもらうから。」
アイラくんは、ズカズカと隼人くんと輝くんに近付くと…その後は言えない…、二人の顔の原型なんて…もうとっくに無くなってた。
「歩くんっ!!」
縛られた縄をなんとか自力で解いて、アイラくんが二人をボコボコにしているのを横目に、歩くんの元へ行く。
「歩くんっ!!歩くん!!」
僕が呼び掛けると、気が付いて目を開ける。
歩くんは、顔に傷があって右腕は酷くボコボコで…本当に、折れてるみたいだった。
「歩くんっごめんなさいっ!!」
歩くんは、泣きながら謝る僕の頬を優しく撫でて、静かにキスをした。
「んッ…」
「…助けてやれなくて、ごめんな。」
歩くんも、悲しそうな顔をするんだ。
でも、あれは僕が間抜けだったから。
「…僕のっせいだっ」
後悔は、涙として流れて、また歩くんに迷惑をかける。
「…ちょっと待て、俺、お前達が付き合い始めたことしらねぇんだが。」
二人を殴るのを気が済んだっぽいアイラくんが会話に入る。