どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第6章 白雪姫と、メイドさん
「続いての発表は、二年A組による白雪姫です。」
劇の始まりを告げるアナウンスが、聞こえる。
呆然とする意識の中、歩くんは僕の頭を撫でてくれた。
安心した。
「穂浪くん、そろそろだよ。」
委員長が小声で僕に呼び掛ける。
僕は頷いて、舞台に歩き出した。
…
…
…
白雪姫の劇はいよいよラストシーンに入る。
やっと慣れてきた。
僕は今、棺の中で寝転んで居るだけ。
後は、歩くんが僕にキ…キスをして、僕が目を覚まして…歩くんに抱きつくだけだ。
「あぁ、なんて美しい白雪姫。私の大好きな白雪姫。愛しています。」
歩くんの台詞が聞こえた。
それで、…ふと気が付いた。
台詞が違う。
本当は「白雪姫、死んでしまったのですか?」でキスだった気がしたんだけど…気のせいかな…。
そう思っていたら、唇に柔らかい感触。
「んッ…」
ついつい反応してしまうのは、仕方がない。
にしても、いつになったら唇離れるんだ?
「ふッ…ぁッ」
何で?
何で舌が入ってきてる…?
細目を開けて、歩くんを見ると、歩くんも目を開けていた。
また…意地悪だ…
舌は僕の咥内を動き回り、深く深く、味わうように徘徊する。
「ぁッ…ふひッ」
あまりにも長すぎるキスに、会場がざわめき出すと、歩くんは唇を話す。
僕の唇と歩くんの唇は、透明な綺麗な糸が紡いだ。
歩くんは僕の耳元で、こうささやいた、
「今の台詞、穂浪に言ったんだよ。」
って…。僕は悶々とする意識の中で残りの台詞を言い終えた。
そして、平和に幕は閉じると、舞台裏から委員長が猛ダッシュで駆け寄ってきて、歩くんの所まで来た。
「歩くん、いつ誰が台詞を変えても良いって言った!?それに、本当のキスはしなくても良いって言っただろ!?しかも、舞台中にディープキスをしろと誰が言ったんだ!?会場が湧いたのは事実だけど、歩くん、俺は完璧主義者なんだ!!」
委員長は、歩くんをこっぴどく叱った。
でも、先生が来て委員長の暴走を止めに来たら、委員長はトロンとした目で先生を見て、先生の後を追いかけて行っちゃった。