どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第6章 白雪姫と、メイドさん
委員長に模擬店を追い出された僕たちは、他の出店に立ち寄る事無く、教室に向かった。というか、歩くんは無言で僕の腕を引っ張るからろくに抵抗さえできない。
教室に着くと、僕は床に投げ飛ばされた。
歩くんは教室の扉の前から動かない。
歩くん…怒ってる?
僕、何かした?
必死で思考回路を回すけど、思い当たる点がない。
…歩くん、すっごく黒いオーラがでてる。
これは…あれだ、僕が初めて犯された時と同じ不穏な空気だ。
「歩く「穂浪は何も分かって無いよね。」」
「へ…?」
あまりにも重たい空気に耐えきれなくなって名前を呼んだ。
だけど、思いもよらない言葉をかけられて間抜けな声を出してしまった。
「僕、言ったよね?」
ガチャ…
扉の鍵がしまる音がして、歩くんはゆっくり振り返った。
……駄目だ…怖すぎる…暗黒すぎる…
「穂浪はどうやら僕の言葉が理解出来ないみたいだね。」
ユラユラと漂うようにこっちに歩いてくる歩くん。
僕は恐怖で、歩くんの歩幅に合わせて後退る。
「穂浪は可愛いんだよって言わなかった?」
え…?
僕は後退るのをやめて、ピタリと動きを止める。
え…?
今の状況でそれ言います?
え…?え…?
僕の目の前まで来ていた歩くんの顔を見る。
…うん、怒ってるよね、どう考えても。
「ねぇ、分かってるのかな、穂浪?」
「ひっ…」
歩くんは壁際でへたれこんでいた僕の顔のすぐ隣の壁を蹴る。
「襲われたい願望があるのかなぁ?」
また同じ所を蹴る。
「そっそんなわけっ「五月蝿いなぁ。別に返答とか要らないから。」」
そう言って、恐怖でしゃがみ込んでいる僕の前にヤンキー座りをして屈む歩くん。
「穂浪って、隙がありすぎ。」
「っぅ…ごめんっなさっ」
「泣いても許さない。」
歩くんに顎を掴まれて持ち上げられる。
「いい加減自覚してよ。穂浪は可愛いんだよ?なんで何時までも自分はむさい男だと思ってんの?なに?今日もあの人達に絡まれてた時、なんで可愛いとか言ってんの?とか思ってたんだろ?」
…図星ー…
気まずくて目をキョロキョロ動かす。
「僕の目をちゃんと見て。」
目線を移動させて歩くんを見れば、真剣な表情だった。
いつもみたいに意地悪な顔じゃない。