
どうして?僕が攻めじゃ不満なの?
第7章 形勢逆転!!にはなりませんでした、普通に。
挑発的な歩くんの顔は、いつよりも妖しくて、綺麗で、透き通ってた。
そんな歩くんを見て、僕が蒸発する訳もなく、僕は無意識に口を動かした。
「僕っ…抱く。」
たった二言だけど、僕としては凄く大きな声で叫んだぐらいの疲労がのしっと身体に乗り掛かった。
僕の言葉を聞いた歩くんは、口元をいつものような意地悪な口元に戻して、目は憐れんでいる?ようにも感じる。
「言ったね?その言葉、忘れないでね?」
歩くんの言葉に、僕は首を振る。
すると、小学生が浮かべるような無邪気な笑顔に変わって、鞄の中をゴソゴソとアサりだした。
そして取り出したモノに僕は驚愕した。
「歩く…それ。」
見ているだけで発作を起こしそうになるソレ。
僕はソレに初めましてではない、一度使われたことがある。
…バイブだ。
歩くんが何故そんなものを取り出すのか、嫌な予感しかしない。
「コレ付けながら、セックスしてね。」
ニッコニッコと無邪気に笑う歩くんは、今までにないくらい愉しそうで、遊具で遊ぶ子供みたいに見えた。
可愛い…。
だけども、
「何でっそんな展開になるわけ!?」
僕は勢いあまり立ち上がり、人差し指でババンとソレを指差した。
「えー、だってご褒美、僕にしてあげたじゃん。」
バイブで手遊びを始めた歩くんを、僕は引きつって居るであろうその面で見た。
「ずっ…ずるいよっ!!」
その通りだ!!
僕が何十分て考えていた事を、自分をご褒美にする事で素早く事を運ぶなんて…。
歩くんなんて…
歩くんなんかっ…
「大っきらいだあぁぁぁぁ!!」
僕は、教室を出て、トイレまで駆けて行く。
転んだって構わないっ、痛かったけどっ
でも、歩くんという宝石、ううん、エサに釣られた魚だね、僕は。
トイレの個室に籠もり、うなだれて涙を流す。
こんな自分が情けない。
まず、歩くんをご褒美としてあげられても、僕が女の人を抱くことさえ出来なければ、僕は…僕は…ただの間抜けじゃないか!!
「あーもーあーもーあーもー…」
自分が情けなさすぎて、トイレの壁にガツガツと頭をぶつける。
