
天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第8章 哀しい別離
「清冶郞さま」
八重もまた涙ぐんで清冶郞を見つめた。
とうとう、その瞬間(とき)が来てしまった。しかも、こんな場面を清冶郞に見られるという最悪の形で。
まだ清冶郞には何も話してはいないのだ。それなのに、いきなり衝撃的な場面を見てしまうなんて、清冶郞の小さな胸はどれだけ傷ついたことだろう。
とにかく、ちゃんと話さなければ。八重は覚悟を決めて、清冶郞に一歩近付いた。
しかし、清冶郞は烈しくかぶりを振った。
「来るな。お前は私の知ってる八重じゃない。八重は、私の八重は、そんなことなんかしない。お前なんか―汚いッ」
清冶郞は叫ぶと、ダッと駆け出していった。
「若君!!」
八重の絶叫が響き渡る。
やはり、清冶郞はすべてを目撃していたのだ。
八重は、狂ったように部屋を出て、廊下まで走った。だが、清冶郞の小さな姿はどこにも見えない。
―八重は、私の八重は、そんなことなんかしない。お前なんか―汚いッ。
清冶郞に投げつけられた言葉が耳奥から離れない。
八重はその場に力尽きたようにくずおれた。
「八重、―済まぬ」
嘉亨の大きな手のひらがそっと肩に乗る。
「私が逸る心を止められなかったばかりに、そなたには辛い想いをさせた」
八重は、その言葉に首を振った。
「殿、私のことは良いのです。清冶郞さまが、若君さまがどれほど傷つかれたかと思うと、八重は辛うございます」
八重もまた涙ぐんで清冶郞を見つめた。
とうとう、その瞬間(とき)が来てしまった。しかも、こんな場面を清冶郞に見られるという最悪の形で。
まだ清冶郞には何も話してはいないのだ。それなのに、いきなり衝撃的な場面を見てしまうなんて、清冶郞の小さな胸はどれだけ傷ついたことだろう。
とにかく、ちゃんと話さなければ。八重は覚悟を決めて、清冶郞に一歩近付いた。
しかし、清冶郞は烈しくかぶりを振った。
「来るな。お前は私の知ってる八重じゃない。八重は、私の八重は、そんなことなんかしない。お前なんか―汚いッ」
清冶郞は叫ぶと、ダッと駆け出していった。
「若君!!」
八重の絶叫が響き渡る。
やはり、清冶郞はすべてを目撃していたのだ。
八重は、狂ったように部屋を出て、廊下まで走った。だが、清冶郞の小さな姿はどこにも見えない。
―八重は、私の八重は、そんなことなんかしない。お前なんか―汚いッ。
清冶郞に投げつけられた言葉が耳奥から離れない。
八重はその場に力尽きたようにくずおれた。
「八重、―済まぬ」
嘉亨の大きな手のひらがそっと肩に乗る。
「私が逸る心を止められなかったばかりに、そなたには辛い想いをさせた」
八重は、その言葉に首を振った。
「殿、私のことは良いのです。清冶郞さまが、若君さまがどれほど傷つかれたかと思うと、八重は辛うございます」
