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逃亡少女と逃亡悪人

第3章 忍耐

姉から離され、何時間が経過しただろう。
一日がもう経過していたのかもしれないし、まだ数時間しか経っていなかったかもしれない。
時を知るはずがない。
なぜならこの部屋には時計も何もなかったのだ。
あるものは、簡素な机と椅子が一つずつだけ。

「・・・」

鎖に繋がれた身体が痛い。
痛いけど、どうすることもできなかった。
こういう時に自分の無力さを思い知る。

(これからどうしよう・・・)

唯一の頼りだった姉からも引き離されて、こんな何もない部屋で身動きもとれないまま一人きり。

(お姉ちゃん・・・)

父が早くに亡くなってから、私には姉が一番のヒーローに見えた。
姉が言うことは全てが正しくて、今でも姉に敵うことはないと思っている。
特に昔からことあるごとに言われてきた言葉は私の宝物だった。

『女であるからこそ強くなくちゃ駄目よ。自分が女であることに甘えなさんな』

その言葉は厳しくもあり、励ましでもあった。

『私たちは強くあって、そしていつかできる大切な人を守るの』

大切な人。
姉の言った大切な人とはいったい誰だったのだろう。
いつも聞けないままでいる。
私にもいつかはそんな相手ができるのだろうか。
何人も恋人がいたことがある姉には、その中に一人でもそのような大切な存在がいたのだろうか。
まだ自分にはよくわからない。

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