
逃亡少女と逃亡悪人
第3章 忍耐
「お前の姉から伝言だ。飯は食えと。あと私の言っていた言葉を忘れないように、と」
それを聞き、私は呆然とした。
そしてあまりもの驚きについつい口を開いてしまった。
「お姉ちゃんがそう言ってたの?」
言ってしまった後に口元を抑える。
「っ!」
口を開かないってさっき決心したのに!
「やっとしゃべったか。もしや口が聞けないのかと思った」
低く安定した声に私は少しだけ安堵した。
この人は今怒っても、嘲笑ってもいない。
ただ私に仕方なく接しているといった感じだ。
「伝言は伝えた。ったく、なんであの女俺に頼むんだ・・・」
ぶつぶつと文句を言う姿は少し他の黒服の集団と違って見えた。
(あ、この人ちょっと父さんに似てるんだ・・・)
だから警戒心が解かれてしまうのだろうか。
「ちなみに食うところまで見届けろと言われた。早く食え」
さすが春子お姉ちゃんだ。
さらった相手に命令してしまうとは。
私は意を決してスープの皿を口元へ持っていった。
スプーンがないため、ずっと吸ったスープはジャガイモの優しい味がした。
少し冷めた感じがビシソワーズのようだ。
食物を口にした途端に一気に空腹を感じだした。
そのまま茶色に色づいたパンも口に運ぶ。
おいしかった。
(生きてるって感じする)
こんな場所でそんなこと改めて思うなんて思いもしなかった。
毎日何気なく繰り返すこの行為の重要さを私は初めて知ることができたかもしれない。
「もう大丈夫か?」
ディーという男はそれだけ言うと、この部屋を出て行った。
私はまだ残っているご飯を真剣に食べていた。
お姉ちゃんの伝言。
ご飯を食べろというのは、生きる強さを持てということだ。
そして、私の言っていたこととはまさに『強くありなさい』と『甘えるな』に違いない。
(お姉ちゃんがついていてくれる)
離れていたとしても姉はすぐ傍で私を支えてくれている。
「そら、といき、つつめー」
父さんだってきっと天国から見守っていてくれる。
だから、私は屈しない。
(お姉ちゃんと一緒に逃げ出してやる)
胸の内に強い決心を抱え、私は今だ自由な両手でぎゅっと握りこぶしを作った。
それを聞き、私は呆然とした。
そしてあまりもの驚きについつい口を開いてしまった。
「お姉ちゃんがそう言ってたの?」
言ってしまった後に口元を抑える。
「っ!」
口を開かないってさっき決心したのに!
「やっとしゃべったか。もしや口が聞けないのかと思った」
低く安定した声に私は少しだけ安堵した。
この人は今怒っても、嘲笑ってもいない。
ただ私に仕方なく接しているといった感じだ。
「伝言は伝えた。ったく、なんであの女俺に頼むんだ・・・」
ぶつぶつと文句を言う姿は少し他の黒服の集団と違って見えた。
(あ、この人ちょっと父さんに似てるんだ・・・)
だから警戒心が解かれてしまうのだろうか。
「ちなみに食うところまで見届けろと言われた。早く食え」
さすが春子お姉ちゃんだ。
さらった相手に命令してしまうとは。
私は意を決してスープの皿を口元へ持っていった。
スプーンがないため、ずっと吸ったスープはジャガイモの優しい味がした。
少し冷めた感じがビシソワーズのようだ。
食物を口にした途端に一気に空腹を感じだした。
そのまま茶色に色づいたパンも口に運ぶ。
おいしかった。
(生きてるって感じする)
こんな場所でそんなこと改めて思うなんて思いもしなかった。
毎日何気なく繰り返すこの行為の重要さを私は初めて知ることができたかもしれない。
「もう大丈夫か?」
ディーという男はそれだけ言うと、この部屋を出て行った。
私はまだ残っているご飯を真剣に食べていた。
お姉ちゃんの伝言。
ご飯を食べろというのは、生きる強さを持てということだ。
そして、私の言っていたこととはまさに『強くありなさい』と『甘えるな』に違いない。
(お姉ちゃんがついていてくれる)
離れていたとしても姉はすぐ傍で私を支えてくれている。
「そら、といき、つつめー」
父さんだってきっと天国から見守っていてくれる。
だから、私は屈しない。
(お姉ちゃんと一緒に逃げ出してやる)
胸の内に強い決心を抱え、私は今だ自由な両手でぎゅっと握りこぶしを作った。
