
逃亡少女と逃亡悪人
第3章 忍耐
(でもご飯を食べさせようとしているってことは、私を殺す気はないのかな)
きっと私には死んではいけない理由があるのだ。
この分だと姉も生かされているだろう。
(でも私、なんの価値もないと思うのに)
医者だった父が死んでからうちにはお金もなくなった。
身代金なんて取れそうにもない。
ただの普通の大学生なのだ。
それなのにどうして突然こんな非日常へと落とされたのだろう。
「・・・そら、といき、つつめー」
自然と口からメロディーが流れ出す。
ただ、このフレーズを繰り返すだけの曲。
私の子守唄。
亡くなった父が私に残してくれた形見だった。
なぜか人の前で歌うことを禁じられた曲。
鼻歌でなら許してくれたのだけれども。
「そら、といき、つつめ」
これを歌うと寂しい気持ちが少し和らぐ。
私の上にある大空が、私の吐息を包んで守ってくれているような感覚。
「そら、といき」
「不思議な歌だな」
「!!!」
息が止まるほど驚いた。
(なんでこの人たち、いつも来る気配ないの!)
開かれたドアに肩をもたれさせ部屋の中を見ていたのは、確かディーという男だった。
少し固そうな栗色の髪と精悍な顔つきは忘れられない。
「・・・」
私はまた無言で通そうとした。
何をしにきたかは知らないが、私は決して負けない。
「やはり飯は食ってないか」
男は私の目の前のトレーを一瞥して短くため息を洩らした。
きっと私には死んではいけない理由があるのだ。
この分だと姉も生かされているだろう。
(でも私、なんの価値もないと思うのに)
医者だった父が死んでからうちにはお金もなくなった。
身代金なんて取れそうにもない。
ただの普通の大学生なのだ。
それなのにどうして突然こんな非日常へと落とされたのだろう。
「・・・そら、といき、つつめー」
自然と口からメロディーが流れ出す。
ただ、このフレーズを繰り返すだけの曲。
私の子守唄。
亡くなった父が私に残してくれた形見だった。
なぜか人の前で歌うことを禁じられた曲。
鼻歌でなら許してくれたのだけれども。
「そら、といき、つつめ」
これを歌うと寂しい気持ちが少し和らぐ。
私の上にある大空が、私の吐息を包んで守ってくれているような感覚。
「そら、といき」
「不思議な歌だな」
「!!!」
息が止まるほど驚いた。
(なんでこの人たち、いつも来る気配ないの!)
開かれたドアに肩をもたれさせ部屋の中を見ていたのは、確かディーという男だった。
少し固そうな栗色の髪と精悍な顔つきは忘れられない。
「・・・」
私はまた無言で通そうとした。
何をしにきたかは知らないが、私は決して負けない。
「やはり飯は食ってないか」
男は私の目の前のトレーを一瞥して短くため息を洩らした。
